オトナの京都
誰もが海外旅行に行ける時代ではなかった70年代頃、
出始めたばかりのファッション誌(アンアンとか、ノンノ)の特集は、
「京都」が多かったような。
そんな京都へ、当時はまだ若かった伯母のお供で連れて行かれた。
そして高校の修学旅行を最後に、京都に行くことがなくなってしまった。
それ以降、雨後の竹の子のように現れたファッション雑誌の特集は海外で、
私だけでなく、日本人の誰もが京都を「修学旅行でしかいかないところ」と
位置づけてしまったのかもしれない。
このたび私は、そんな「修学旅行以来」の京都に行ったのだ。
夏の京都は「油照り」と言われる暑さだそうだけれど、
地球温暖化現象なのか東京の夏も暑いから、辛さは予想をちょっとだけ下回る。
オトナの京都、昼間はまず買い物(買出し)だ。
オトナ~というより、これじゃあオバサンの京都かな?
東京では、デパートの野菜売り場の片隅にしかない(それも高価)
加茂ナス、九条ねぎ・・・。
宅急便のなかった昔は、これら買いたくても我慢しただろうな。
そして購買意欲は東京にいるときと違うベクトルを描いている。
おしゃれなカフェ・バーみたいなお香の店「リスン」
(京の香老舗、松榮堂のインセンス・ショップ)では、「2006年の夏」を
テーマにしたお香セットなどを、
箸の店、「市原平兵衛商店」では、昔祖母が使っていたのと同じ、
先のとがった箸を、
写真の町家、「便利堂」では鳥獣戯画の一筆箋を・・・。
次々とゲットする、職人芸の商品が嬉しい。
東京では、昔ながらの職人がいる店が、どんどんなくなっている。
作った人の見えない商品は、どんなにおしゃれでも愛着がわかない。
愛せないものは、飽きたり壊れたりしたらすぐ捨てる。
東京は、そんなもの(人も?)で溢れ返っているような。
そして夜の部は、祇園の町へ。
東京の花柳界は風前の灯だけど、ここではしっかり、お茶屋も健在だ。
もっとも、カラオケやバーなどを併設して、今どきな感覚の店も。
それでもしっとりとした木造家屋が、ホッと心を和ませる。
かつて修学旅行で京都を訪れたとき、
「うちの近所みたいだ~」
と思った私だが、今は違う。
かつては夜な夜な、三味の音が聞こえたうちの近所は、
ビルと空き地だらけのゴーストタウンと化し、
行きかう人も知らない人ばかり。
東京はこれでいいのかしら?
何とかヒルズを作るんだったら、今度はせめて木造にしたらいいよ。
しっとりとした、艶のある街こそ世界に誇る「日本」じゃないの?
そう、今みんなで京都の町を見習おう!
そんなことを考えさせる、30年ぶりの京都であった。
aisbn:4426751160旅先だとどうして彼は不機嫌になるの